争点は「停滞か、成長か。」
- 吉村永藤さん。いよいよ、秋の堺の大戦(おおいくさ)のシーズンになりましたね。テーマは何ですか?
- 永藤テーマは「停滞か成長か」この一点です。
- 吉村堺はどうですか、この8年間振りかえってみて。僕が外から見てる限りでは、堺が成長しているようには見えないですが、実際はどうなんですかね?
- 永藤いま府議会議員で仕事をしていますので、府議会議員として、大阪の成長と見比べたときに、堺の停滞というのがより浮き彫りになるんですよね。イチ堺市民としても成長を感じられないし、議員としてみたときに、なおさらそれが如実に現れると感じています。
堺の人口流出問題
- 吉村この成長かどうかというので一番大事になってくるのが、やはり人口ね。これが増えているのか減っているのか、これは市長だと気にしないといけない。実は竹山市政では7000人減っていると。これ、実は全国のワースト10ですからね。
- 永藤やっぱり停滞だと感じるのは、人が入ってくる、企業が入ってくるというのがないと、なかなか人々の意識も変わりません。やっぱりこの堺に住みたい、堺で仕事がしたいという人を惹きつけるためには政策がいると思うんです。いま大阪市で先行してやっている子育て政策がたくさんありますけど、それを堺でも最低そこまではまずはやると。そして大阪市を超えないと堺に人が入ってこないんです。
- 吉村僕が市長になって最初にやったのは、5歳児の幼児教育の無償化というのをやりました。これは大きな財源がかかります。財源がかかるので反対もあったなかで、僕はこれは必ずやると覚悟を決めて、一番最初の予算編成でやりました。財政局ともだいぶ議論して、やりとりをしてやりました。職員の給与カットも続けましたし。これはもう首長の気合ですよ、気合。
- 永藤やるかどうか。
- 吉村そう。あとはその方向性ですね。堺を将来どうしたいのかというビジョン。それで街は変わると思いますね。
堺の人口流出問題 ~住民サービスと財源~
- 永藤若い世代が入ってくるというのも一つですし、いま住んでいる堺市民の方も安心して暮らしてほしいというのがありますので、これはたぶん、まだ大阪市でもやってないと思うんですけど、がん検診を無償化したいと思っています。がん検診を一定の年齢以上の方は皆受けていただいて、無償で。少しでも健康で長生きしていただくという施策をぜひやりたいですね。
- 吉村いいですね!じゃあそういった財源をどこで生み出すのかというのが、一番大変な首長の仕事なんです。選挙で支えられるとそこにお金を回さないといけなくなるから、いまの竹山市政なんていうのは、自民党から民進党から共産党から支援されているワケでしょ?役所改革がこれではできない。役所改革ができないのにどうやって財源を生み出すのかと思います。
- 永藤本当に必要なところに税金が使われる仕組みが必要ですよね。いつも、組織や団体に税金が使われている、古い政治が(今の)堺ですから。大阪市ではそういうのはもう改善されていますか?
- 吉村僕の時もそうでしたから。それでもなんとか、反対・アホボケと言われながらも歯を食いしばりながらやれば、いろんな改革ができます。必要なのは財源を生み出す、そこですよ。永藤さんが言う、子供の幼児教育の無償化やがん検診の無償化、これは予算との戦いになってきます。そうなった時に配慮しなければならない労働組合や共産党や自民党、民進党がいたらそんな改革は絶対できない。今、やっていないのでね。だから、永藤さんにはこの戦いを勝ちきって、ぜひ市民の皆さんに喜んでもらえるような、先ほど永藤さんが言っていた様な改革をぜひやって貰いたいですね。
- 永藤これは、やはり政治闘争になりますからね。改革しようと思ったら、それだけ戦っていって成果を出すと。実際に成果を市民が実感出来なかったらだめですからね。その繰り返しで、やはり既得権益というところは排除できると思いますよ。
- 吉村自民や民主、共産とか考え方が違う様なところでは、そんな既得権ばかり集まっているところが、一緒になってやる。まさにそこが市長になったら市民には絶対お金は回ってこないと思いますね。
堺の高い水道料金問題
- 永藤今の堺の課題として、地元を回っていてよく聞くのが、なんせ水道料金が高い。下水道・上水道、両方ともに高いという話を聞くんです。実際、大阪市と比べて、市長からどうですか?
- 吉村これは堺市民の皆さんには申し訳ないけど、(堺は)高い。例えば上水道で、平均的な家族3~4名で使うとしたら、大阪市が2000円のところ、堺は2500円くらいです。500円も高い。下水道については大阪市は1200円くらいのところ、堺は2倍以上の2800円くらい。年間に直したら全然違いますね。大阪市が40000円くらいだったら、堺市は60000円くらい。
- 永藤僕が調べてみたら、上水道は毎年借金を増やしながら運営をしている。下水道は泉北ニュータウンは山あり谷ありがありますので、そこで多額の借金をして整備をしている。今でも2700億円もの企業債が残っている。だからなかなか堺だけでは値下げができないんです。
- 吉村上水道も下水道も、水道についてはまだ実現はできてないけども、将来的にはワン水道を目指すべきだと思います。大阪市は全部自分たちで作る水があり、下水道も整えていますけども、水を供給するのが余ってますからね。昔、大阪府で持っていたやつ、今は大阪府下市町村でやってますけども、それも余っている。
- 永藤逆に堺は浄水場を持っていないので、100%受水です。水道をもらうだけ。なので、余っている状態があるのであれば、大阪府域で一水道にすることで効率化が図れると思います。
- 吉村そう。下水についても、大阪市はこれまで下水道をやっていましたが、さっき言ったように民間でできることは民間化していこうと。株式会社で自由な形態でこれからやっていってもらいますから、それこそ隣接の市町村と協力してね、どんどん大阪府下に広げていけば、安くコストカットしながら下水の処理もできるようになりますから。ベストなカタチを作れば、その利益を大阪府民全員が享受できる体制にしなきゃいけない。
- 永藤さっきお話しになったように、大阪市の2倍以上の料金を堺市民は払っているわけですから、それを1割でも2割でも下げる。そして大事なのは、安心して使ってもらえるという、この2つを両立させないといけない。そのために大阪市の事業と、そこに協力してもらう。もしくは堺市自体が民営化する。なにもしないと水道料金の値下げができないんです。知恵をこらしながら、いろんな手法を取り入れて、水道料金の値下げをぜひやりたいと思っています。
増え続ける堺の借金
- 吉村もうひとつ大きな課題が借金。大阪市は借金をどんどん今、減らしていっています。これは当然、借金を減らしながら増税もせず、財源を生み出すというのが腕の見せ所です。これをやってます。
- 永藤堺は、財政が健全ということをずっと言い続けているわけですよね。でも借金は減っていない。臨時財債をいれてどんどん増えてるわけです。
- 吉村臨時財債を抜いても、借金が増えてるってね。これはちょっとありえないですよ。
- 永藤それはやっぱりハコモノ行政だと思うんですよね。今までどんどん税金でハコモノを作って、それをまた市債で発行するんですよね。やっぱりどうしても借金が増えていく。そういう行政をやめないといけない。借金の問題はやはり将来へのツケですから、これは将来世代に負担を残さないためにも借金を減らしていかないといけない。そのためにもハコモノが本当に必要なのかどうなのか、また財源をどうやって生み出すか、成長戦略も必要ですし、本当に大きな視野で借金問題を考えていかないといけないですね。
- 吉村借金は当然、将来の子どもたちの負担になるので減らしていかないといけないし、一方で成長戦略もやっていかないといけない、このバランス感覚がものすごく大変です。
東西交通のビジョン
- 吉村堺も交通でも課題があるんでしょ?そういったことについては、借金を増やさない前提で、堺の課題である交通、これをぜひやってもらいたい。
- 永藤東西交通というのは、堺ではずっと言われてきています。堺から大阪市にはすぐにいける。ただ堺同士で東西がつながっていない。なので不便だということを、もう100年くらい前から指摘されているんです。
- 吉村100年も?
- 永藤100年も。それがなかなか実現しない。だれも首長が実現に向けて動き出さないんですよね。これをやろうとしたらお金がかかると。
- 吉村今、大阪市内でもBRT(バス高速輸送システム)をやろうというのでね。鉄道は僕は延ばさないけども、お金がかかって赤字になるから。BRTでできないかという検討はまさに進めていっている。だから堺でもBRTとかLRT(次世代型路面電車システム)とか、やり方はいろいろあるのでね。本当に必要なインフラであれば、ぜひそこの東西交通網、堺の皆さんが100年かけて思っているのだったら、やっぱり検討して、やらないといけない。できないようだったらこういう理由でできませんとちゃんと正直に言わないといけないし、できるんだったらこれだけ借金が増えるけれどもトータルでこれだけ減らすからやらせてくれということを言わなきゃいけない。
- 永藤そうですね。これは堺市民の悲願ですので。財政とのバランス、そして将来へのビジョンを描きながらぜひ実現したいと思います。
- 吉村そうですね。
民間でできることは民間で
- 吉村民間でできるところを今までは役所が一生懸命一生懸命やろうとしていた、大阪市はそうでした。いま堺市もそうなっていますよ。でもそれをやるとドンドンドンドンお金って流れていきます。民間でできることは民間でやってもらったらいいんですよ。
- 永藤古い考え方だったらやりくりしながらですけど、新しい発想で民間の力を借りながら財源は作れると思っています。その財源を投資をして、そして市民生活が向上して、更に人口が入ってくる。やっぱり流れで財源っていうのは増えてくると思いますので。
- 吉村それはまさに僕もやってる所なんです。例えばですけど、大阪城公園は、いま非常に増えてます。255万人、姫路城も抜いた。これまでは大阪市が全部管理。職員が草刈ったりして毎年8千万円ほど使っていました。草刈りも含めた維持管理を民間にやってもらう。その代わり大阪市が許可すれば民間の自由な発想で、いろんなお土産屋さんとか飲食店とか、賑わい、そういったこともできるようにする。そうしていろんな売り上げが出てきたら、その一部を大阪市がもらっている。いま2億円ほどもらっていますから。
- 永藤めちゃくちゃ画期的じゃないですか、その仕組みというのは。
- 吉村ただ、これをやろうとしたら何がネックになるかというと、一つは役所の仕事を僕が取り上げたわけです。役所と市長との戦いですよ。これは公務員労働組合に支えられていたら絶対にできません。でもそうやって財源を生み出して、税を使わずに、逆にお金を増やしてもらって賑わいを作る。これは堺でやらないといけないけど・・・。もうひとつ、こう言ってきますよ。「そんな歴史文化施設に、民間が入るなんてけしからん」て言うね。学者理論。紅茶をすすっているような学者が「けしからんじゃないか」っていう感じ。
- 永藤その学者は役所のなかにいるんですか?
- 吉村いや、役所にはいないけど、役所に影響力があるんです。役所の人間も、そういった考えが染みついてますんでね。だからそういった人がいるんだけど、でも大事なのはやっぱり見て貰う事なんですよ。多くの人に見てもらわなかったら、もう何にもないだけじゃないですか。役所だけでやって、こじんまりインテリジェンスで紅茶をすすりながらやってるようじゃね、いつまでたっても堺は良くならないですよ。
- 永藤役所が運営したら、やっぱり発想が乏しいんですよね。儲けることはできませんから、役所では。
- 吉村役所に民間事業をやらしたら絶対にダメ。絶対に失敗する。
堺のパークマネジメント
- 永藤今度、百舌鳥・古市古墳群がいま国内推薦に選ばれましたけど、その前に大仙公園という市営の公園があるんです。すごい広い敷地があって、博物館も公園も図書館もあるんです。日本庭園まであるんですよ。その横に今度、ガイダンス施設という40億円かけてハコモノを作ろうとしているんです。
- 吉村やっちゃった。
- 永藤今度また4月から着工する予定なんですけど。
- 吉村やっちゃう?
- 永藤やっちゃうんです。これを、ぜひ止めたいんですよ。博物館ですら、博物館好きなので一年に1回くらいは行きますが、それでもガラガラです。それが活用できていないのに、そこから100mくらいのところに、また新しい施設を作ろうとしているんです。
- 吉村ハコモノを。
- 永藤ハコモノ40億円。
- 吉村税金を使って。
- 永藤税金使って。無料なので、これから運営するのにも毎年何億円お金がかかかります。本当にムダとしか言いようがない・・・
- 吉村完全に役所丸抱えですね。
- 永藤それをぜひ民間活用して、パークマネジメントをやりたいんです。
- 吉村だから、博物館とかいろんなものがある、そして百舌鳥・古市古墳群に近い、世界遺産候補の近くにあるような公園が、そんな風に財産として眠っているんだったら、これは堺として大きな損をしていますよ、今。
- 永藤そうゆうところが何か所もあるんです。各区にあるぐらいの勢いで、眠っている施設がある。スポーツ公園を税金垂れ流して運営していたり、土塔という、中区にあるピラミッドのようなものを修復したんですけど、誰もそこに入っていないんですよね。それこそ民間で運営してもらって、カフェを併設して、賑わうような施設にできるのに。本当にもったいない、もったいないの宝庫ですよ、堺は。
- 吉村だから、まさにそんな公園があるならね、僕もそんな知らなかったですし。これはもう堺のPR不足じゃないですか。そんな公園があるんであればね、当に百舌鳥・古市古墳群は世界遺産への登録の申請になったっていう話ですから。いま注目されている。じゃあそこで人が見に行ったときに「ああ、これは面白いところがあるな」って思ってもらえるかどうかが大事なんです。行政は、やっぱり多くの人に来てもらおうという発想があまりないです。
- 永藤そうですね。やりきったら、やったらいいと、運営を。そこで儲けようと思ってないし、維持管理だけですもんね。発想がない。
- 吉村じゃあ永藤さん、一緒にがんばっていきましょう!
- 永藤ぜひがんばりましょう!
- 吉村・永藤ありがとうございます!
堺市民のみなさまへ
- 吉村堺市民の皆さん、こんにちは。僕と永藤さんはちょうど歳は同じくらいです。僕も最初、大阪市長をやるときに「お前みたいな若いやつにできるんか」といろんな所で言われましたが、なんとか維新スピリッツを持って、今まで100点満点とは言えませんが、がんばってやってきています。ぜひ若い永藤さん、若い者ですが、ぜひやらせてもらいたいと思います。僕と永藤さんがタッグを組んで、大阪市・堺市、もっともっとお互い、切磋琢磨しながら成長することができると思います。
スペシャル対談はこちら